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京創舎Blog

日記
2017年12月02日(土) #スタッフ日記  #河野日記 

「暮らしと読書」青春ブンガクのコーナー

おはようございます。京創舎スタッフ河野です。珍しく、京都ともコワーキングとも全く関係ない話をします。「暮らし」に本は欠かせない、一応そういうことで今回は本の話。取り扱うのは定番の青春ブンガク。

中学生ぐらいの頃から、小説に限らず本を読んできました。小説で特に好きだったのは、青春ブンガクです。青少年期、若者を題材に扱った青臭い小説を好んで読んでいました。今回は今まで読んできた本のいくつかを紹介します。ド定番なので、既に読まれている方も多いと思います。好き嫌いあると思いますが、興味が湧けば手にとってみてください。

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正義と微笑|太宰治

太宰治といえば、2015年に「火花」で芥川賞を獲ったピース又吉がもっとも好きな作家として挙げていることでも有名です。それ以前に日本人だったら「人間失格」等で誰でも知っていますね。僕と同世代なら「富嶽百景」や「走れメロス」などを高校の教科書で読んだという方も多いと思います。

「正義と微笑」はそこまで有名な本ではないですが、劇団の俳優を目指す若者の日記を題材とした、いかにも若者らしい中編小説です。時代は違えど若者の精神は変わらない。僕自身が初めて読んだのもちょうど高校生の頃で、同調していたことを思い出します。今読み返すと、若かった頃のみずみずしさを思い出せるんじゃないでしょうか。

わたしを離さないで|カズオ・イシグロ

今年ノーベル文学賞を受賞したことで話題になった、日系ブリティッシュのカズオ・イシグロ。2006年に発表された「わたしを離さないで」は世界中で翻訳されベストセラーになり、イギリスでは映画化、日本ではTBSでドラマ化されました。主人公が過去を回想しながら人生を語る、という手法をよく用いています。

「わたしを離さないで」は特に女性におすすめです。主人公が女性であり、子供の頃からの女同士の友情や、間に男の子を挟んだ関係が気持ち悪いぐらい生々しく描かれています。若い年代を舞台にしながらも、生きるということに向き合う姿勢など、ある程度年齢を経ても共感できることが多い小説ではないでしょうか。

魔の山|トーマス・マン

トーマス・マンは少し古いですがドイツの作家です。この人もノーベル文学賞を受賞していました。「ブッデンブローク家の人々」という小説が評価されたということで「魔の山」はノーベル賞と直接関係ありません。けっこう長い本で、言葉遣いなどもやや読みにくく感じるかもしれません。

「魔の山」は、山頂にあるサナトリウム(結核療養所)を舞台にした小説です。時代性が出ていますね。技術者として大学で学んだハンス・カストルプは、いとこのお見舞いのためにスイスの山奥にあるサナトリウムへ向かいます。山を登っていく列車の描写もいいです。「魔の山」では下界と全く違う生活が営まれており、薬としてビールを飲んだりスキーをしたり、若者のメンターのような存在であるナフタとセテムブリーニの論争が繰り広げられます。

罪と罰|ドストエフスキー

世界最高の作家として一番最初に名前が挙がるのは、ドストエフスキーじゃないでしょうか。帝政ロシア、農奴解放の頃の作家で、こちらも時代性が強く出ています。古い文体や外国語の人物名などから難しく感じてしまい、苦手意識を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際読んでみれば意外と慣れます。

「罪と罰」は殺人事件を取り扱うミステリー小説のはしりと言われています。大学を中退したラスコーリニコフを心配して、母と妹は下宿先を訪れます。当のラスコーリニコフはピリピリしている様子。妹は結婚話が持ち上がっており、兄という立場から婚約者と対面したり、妹に惚れている人も訪ねてきたり、飲み屋で知り合ったおっさんの娘が娼婦として家計を支えていたり、いろんな要素が詰め込まれています。

ノルウェイの森|村上春樹

現代日本人作家ではもっとも有名な村上春樹、新刊が出ればベストセラーになり、ノーベル賞の時期には毎年候補として話題に挙がります。村上春樹がノーベル賞候補として騒がれだしたのは「海辺のカフカ」がチェコのフランツ・カフカ賞を獲ったあたりからで、ノーベル文学賞の登竜門的な扱いとなっています。その他エルサレム賞やカタルーニャ賞といった海外の名高い文学賞受賞の常連でもあります。

「ノルウェイの森」は日本で発行部数1000万部を超えるベストセラーになりました。海外ではマジックリアリズムの作家として認識されている村上春樹ですが、「ノルウェイの森」だけは珍しくリアリズム小説として書かれています。故郷の街を離れ、東京で大学生として新生活をスタートするワタナべくんは、かつての親友、自殺したキズキの彼女だった、直子と偶然再会します。

アメリカ|フランツ・カフカ

フランツ・カフカは「変身」が有名であり、教科書で読まれた方も多いと思います。朝起きたら巨大なムカデになってたやつです。フランツ・カフカは「失われた時を求めて」のマルセル・プルーストや「ユリシーズ」のジェイムズ・ジョイスと並んで、20世紀最大の作家と呼ばれています。"カフカ以降"という言葉があるほど後の多くの作家に影響を与えました。

未完の作品が多いフランツ・カフカですが「アメリカ」は比較的わかりやすく、完結もしています。両親から追い出され、移民することになった少年カール・ロスマンは、単身アメリカの地を転々とします。出会う人出会う人に誤解され、裏切られ、カフカの真骨頂と言える不条理を描いた作品です。

ライ麦畑でつかまえて|J.D.サリンジャー

さて、トリはサリンジャーです。2010年に亡くなったサリンジャーは、生涯であまり多くの作品を発表しませんでした。主に「ライ麦畑」しか知られていませんが、他にグラースサーガと呼ばれるグラース家の面々を主人公にした「ナイン・ストーリーズ」「フラニーとゾーイー」などがあります。早々に隠遁生活に入り、娘からの暴露本が出たりもしています。

「ライ麦畑でつかまえて」は、高校生のホールデン少年が退学になり、期日前に学校を抜け出してニューヨークの街を3日間さまよう小説です。この小説の第一の特徴として、その文体があります。当時の若者の言葉遣いを再現しており、読者はまるで親友に話しかけられているような形で読むことになります。正しく純粋であることを尊ぶホールデン少年は、そういうものから程遠い世の中の現実と向き合おうとしていますが、うまくいきません。

青春文学の特徴

「未成熟な人間の特徴は、理想のために高貴な死を選ぼうとする点にある。これに反して成熟した人間の特徴は、理想のために卑小な生を選ぼうとする点にある」

この言葉は「ライ麦畑でつかまえて」に出てくる一文で、元はウィルヘルム・シュテーケルという精神分析の学者が書いたものらしいです。

「大人とは、裏切られた青年の姿である」

これは太宰治の言葉です。いずれも若者について述べた言葉であり、青春文学の特徴を現していると言えます。若者は大人になる過程において、清純さを失っていきます。正しさなんて実在しないということを、身をもって体験します。それを世の中を知るだとか、成長だとか言います。

誰もがそういった過程を経るとは限りませんが、青春文学の特徴としては、若者から大人への成長過程に多くの人が抱えるやりきれない気持ちを描いています。作中ではそのやりきれない気持ちに立ち向かえず、病気になったり、死んでしまう登場人物が多く登場します。今回紹介した本は、必ずしもそういうテーマを扱った本ばかりではありません。上手く向き合えた例を描いたものもあります。いくつかは京創舎の本棚に置いておりますので、興味が湧いたら手に取ってみて下さい。借りたければ、自由に持って帰ってください。

京創舎スタッフ 河野

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